看護師は長時間労働や人間関係によるストレスが大きく、離職率が高い職種です。しかし、慢性的な人手不足や病院ごとの独自ルールによって、思うように辞められないケースも少なくありません。
退職を申し出ても、「後任が見つかるまで辞めないでほしい」「最低でも6か月は働いてもらう必要がある」と言われ、退職代行の利用を検討する人もいるでしょう。
本記事では、看護師が退職代行を使って辞める際のメリット・デメリットや利用時の注意点、そして退職を考えるべき病院の特徴について解説していきます。


看護師も退職代行で辞めることが可能
看護師という職業は人の命を預かる責任の重い仕事であるとともに、人手不足が深刻な医療現場では退職を申し出ても強く引き止められるケースが少なくありません。
どうしても自力で辞めることが難しい状況の場合、看護師であっても退職代行を利用することが可能です。
特に、退職に伴う精神的な負担を軽減したい場合や、退職交渉が難航して辞めることができない看護師におすすめの選択肢といえるでしょう。
ここからは、「正社員(無期雇用)」「契約社員・パート(有期雇用)」、もしくは「公務員看護師」の退職代行利用について、詳しく解説していきます。
正社員の場合は退職申し出から2週間で退職可能
看護師が正社員(無期雇用契約)として働いている場合、民法第627条に基づき、退職の申し出から最短2週間経過すれば法律上は退職が成立します。
多くの病院の就業規則では1〜3ヶ月前の退職申し出を求めていますが、これは法律よりも厳しい条件であり、基本的には民法の規定が優先されます。
退職代行サービスを使って辞める場合も同様に、民法第627条の規定に則って手続きをすることで、スムーズに退職することが可能です。

正社員(無期雇用)の看護師は、法律上「いつでも退職を申し出ることができる」とされており、申し出から2週間が経てば退職が可能です。
その点において、実は契約社員やパートなどの有期雇用契約の看護師よりも、退職しやすい立場にあるといえます。


有期雇用の場合もやむを得ない退職理由があればすぐに辞められる
契約社員やパート、派遣社員などの有期雇用契約で働いている看護師の場合は、契約期間の途中で退職する場合は基本的に「やむを得ない理由」が必要とされています。
- 退職のやむを得ない理由
- 会社の合意
※ただし、雇用契約から1年以上経過していれば、いつでも退職可能
参照:e-Gov法令検索「労働基準法第137条」
「退職のやむを得ない理由」の具体例としては、仕事を続けることができない病気やケガ、家族の介護や引っ越しなどが考えられます。
また、上司のハラスメントや法律違反の労働環境など、看護師が直面する多くの問題は「やむを得ない事由」として認められる可能性が高いです。
これは、退職代行サービスを利用する場合でも同様で、一方的に辞めることは難しいケースもあるため注意が必要です。
そのため、スムーズに退職するためには、事前に退職理由を明確にし、退職代行の担当者と認識にズレがないように丁寧な擦り合わせを行うことが重要です。



病院側から退職の合意を得るためには、交渉が必要となるケースが少なくありません。
しかし、民間の退職代行サービスでは、法律上の制約により「退職に関する交渉」はできません。
そのため、有期雇用契約の看護師が退職代行を利用する場合は、交渉が可能な「弁護士」や「労働組合」が運営する退職代行サービスを選ぶことをおすすめします。




自治体運営の病院で働いている場合は弁護士の退職代行に依頼するべし
公立病院や自治体が運営する医療機関で働く看護師(通称:「公務員看護師」)が退職代行サービスを利用する場合は、代行業者の選定に特に注意が必要です。
また、一般の民間の退職代行業者も同様に、基本的に公務員の退職に対応していないことが多く、利用可能なサービスは限られます。
そのため、公務員看護師が退職代行を使って退職したい場合は、弁護士が運営する退職代行サービスを選ぶことを強くおすすめします。



国や自治体が運営する病院は、労働に関するリテラシーが高い傾向があり、退職を申し出た際に非常識な引き止めや在職強要を受けることは比較的少ないと考えられます。
そのため、「気まずくて退職を言いづらい」という場合でも、まずは自分の口から退職の意思を伝えることが基本です。
そのうえで、どうしても自力での退職が難しいと感じた場合は、退職代行サービスの利用を検討するとよいでしょう。


看護師が退職代行サービスを利用するべき状況
看護師は、責任の重い仕事を担う一方で、過酷な労働環境や人間関係のストレスに悩まされるケースも少なくありません。
特に人手不足が深刻な医療現場では、退職を申し出ても引き止められたり、交渉が難航して「いつまでも辞められない」という状況に陥ることも珍しくないのが実情です。
そのため、退職を決意した看護師であっても、状況によっては、退職代行サービスの利用を選択肢に入れるべきケースもあります。
特に退職代行の利用を検討した方がよい状況は以下の通りです。
それぞれ詳しく解説していきます。
退職を申し出たが強い引き止めにあって辞められない
医療現場における慢性的な人手不足は深刻な問題となっており、看護師が退職の意思を示しても、「今辞められると困る」「患者さんのことを考えてほしい」などの理由で、強引に引き止められるケースは珍しくありません。
正社員(無期雇用)の看護師であれば、法律上、退職の申し出から2週間で退職できるはずですが、このように数か月以上退職できない状態が続く場合は、退職代行サービスの利用を前向きに検討する必要があるでしょう。



看護師業界では、「責任感」につけ込んで退職を引き止めようとするケースが珍しくありません。
しかし、退職を決意した際には、感情に流されるのではなく、自分自身の生活やキャリアを第一に考え、冷静に具体的な行動を起こすことが大切です。
もしも自力での退職が難しいと感じた場合は、退職代行サービスの利用を選択肢に加えることも検討してみましょう。




長時間労働やパワハラが常態化している
看護現場では、人手不足を理由にした違法な長時間労働や残業代未払いなどの労働問題が常態化している職場も少なくありません。
特に大きな病院や古い体質を持つ医療機関では、「看護師は我慢して当然」という風潮が残っており、労働基準法に違反するような状況でも声を上げづらい環境があります。
このような劣悪な職場環境においては、希望通りの退職を受理されないリスクが高く、退職代行を利用して速やかに脱出することがおすすめです。



過労やハラスメントは、本人が自覚する以上に深刻な影響を心身に及ぼすことがあります。
労働環境に重大な問題がある場合、早期に外部機関や専門家に相談し、自らの健康を最優先に守るようにしましょう。


看護師長との関係性から直接退職を言い出せない
病棟の看護師長との関係性が悪い、あるいは恐怖心があって退職の意思を直接伝えられないケースもあるでしょう。
看護師長は一般企業でいう管理職に相当し、師長に話を通さないと退職が進まないことが多いため、必要以上にストレスを感じてしまうことも少なくありません。
こうした状況では、無理に自分で伝えようとせず、退職代行サービスを利用することで、精神的な負担を軽減しながら迅速に退職を進めることができます。



特に、「退職をも牡牛出ようとすると体調が悪くなる」という場合は、第三者の力を借りてでも早期に退職した方がいいでしょう。
ただし、「直接伝えるのが気まずい」「お世話になったから退職を伝えづらい」という場合は、基本的に自分の口から退職を伝えるようにしましょう。
仕事のストレスで心身に悪影響が出ている
看護師は夜勤を含む24時間体制の不規則なシフトで働くことが多く、生活リズムの乱れからくる身体的な不調を抱えやすい職業です。さらに、常に緊張感のある環境で働くことによる精神的ストレスも大きいものがあります。
実際、日本看護協会の調査によれば、「看護管理者が考える主な新卒看護師の主な退職理由」として、52.5%が「健康上の理由(精神的疾患)」を上げています(以下表参照)。
看護管理者が考える た新卒看護師の主な退職理由 | 回答割合 |
---|---|
健康上の理由(精神的疾患) | 52.5% |
自分の看護職員としての適性への不安 | 47.4% |
自分の看護実践能力への不安 | 41.6% |
上司・同僚との人間関係 | 29.8% |
他施設への関心・転職 | 21.8% |
健康上の理由(身体的疾患) | 15.8% |
他分野(看護以外)への関心・転職 | 14.6% |
上位5つを選択して回答
特に、不眠、過度の疲労感など心身の不調が現れている場合は、これ以上無理をせずに退職代行サービスを利用してでも環境を変えることを考えるべきといえるでしょう。



心身の不調が現れた場合、それは「個人の努力不足」ではなく、職場環境に問題がある可能性が高いサインです。
無理を重ねるよりも、専門家や第三者の力を借りて早期にリスクから離脱する方が、結果的にキャリアや人生の長期的な安定にもつながります。
「今の職場を辞めた後、どうすればいいか分からない」「看護師として転職するか悩んでいる」という場合は、キャリアバディでキャリアコンサルタントなどの専門家に相談するといいでしょう。
看護師におすすめの退職代行サービスの選び方
退職代行サービスは数多く存在しますが、看護師という特殊な職業環境を考慮すると、すべてのサービスが同じように適しているわけではありません。
ここでは看護師が退職代行サービスを選ぶ際の以下のポイントを解説し、失敗しない選び方をご紹介します。



個人や民間企業、労働組合や弁護士まで様々な事業者が退職代行サービスを運営しています。
サービスごとに特色や強みがあるため、自分自身に最適なサービスを選ぶように心がけましょう。


退職に伴う条件交渉の必要性で選ぶ
退職代行サービスは大きく分けて、民間や労働組合が運営するもの、弁護士が行うものの3種類があります。それぞれ対応可能範囲が異なるため(以下表を参照)、自分自身の目的に合ったサービスを選ぶ必要があります。
退職代行の種類 | 退職意思の伝達 | 退職の条件交渉 | 公務員看護師の退職 | 訴訟等の法的対応 |
---|---|---|---|---|
弁護士 | 対応可能 | 対応可能 | 可能 | 対応可能 |
労働組合 | 対応可能 | 対応可能 | 難しい | 対応不可 |
民間事業者 | 対応可能 | 対応不可 | 難しい | 対応不可 |
単に退職の意思を伝えるだけなら民間の退職代行サービスでも可能ですが、未払いの残業代請求や有給休暇の消化交渉など、「交渉」が必要な場合は労働組合か弁護士法人が運営するサービスを選ぶ必要があります。
また、前述したように国や地方自治体が運営する病院で働く「公務員看護師」の場合、弁護士以外の退職代行サービス以外では対応できないことが多いため、注意しておきましょう。



民間の退職代行は「使者」として退職の意思を伝達することしかできないため、病院側と交渉が必要になった際に適切な対応が難しくなってしまいます。
有給消化や退職金の交渉まで希望する場合は、労働組合や弁護士の退職代行を選ぶようにしましょう。
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看護師の退職成功実績が十分にある
退職代行サービス選びで最も重要なのは、そのサービスの成功実績です。
サービスを選ぶ際は、SNSや外部サイトの口コミを参考にしながら、看護師の退職実績や成功率をしっかりチェックしましょう。
「退職成功率100%」とうたっているサービスも多く見られますが、その数字を鵜呑みにせず、運営歴や累計実績件数なども合わせて確認し、総合的に信頼性を判断することが大切です。



看護師の退職代行利用は多く、運営実績が長い業者であればある程度のノウハウが蓄積していることが期待できます。
もし不安な場合は、メールやLINEで問い合わせをする際に、看護師の退職代行実績について確認してみるといいでしょう。
看護師の勤務形態に合わせた素早い対応が可能
看護師は夜勤や変則シフトなど不規則な勤務形態で働いていることが多いため、24時間対応や迅速な連絡体制が整っているサービスを選ぶことが重要です。
迅速に対応してもらうことで、余計なストレスを抱えることなく、スムーズに退職手続きを進めることができるでしょう。



勤務シフトが不規則な看護師の場合、「スピード」と「柔軟な対応力」が非常に重要です。
即日対応や深夜連絡可能なサービスを重視して選定しましょう。
料金体系が明確
退職代行サービスの料金相場は、運営元によって以下のように異なります。
退職代行の種類 | 利用料金の目安 |
---|---|
弁護士 | 2~3万円 |
労働組合 | 2~3万円 |
民間事業者 | 3~10万円 ※別途成功報酬が必要な場合があります。 (相場は回収金額の20~30%が相場) |
代行サービスを選ぶ際には、料金明示され、追加料金の有無についても確認する必要があります。また、後払いや全額返金保証など、利用者保護の観点からサービスの信頼性を高める取り組みがあるかどうかも確認しましょう。
「パートタイム」と「正社員」で料金設定が異なるサービスもあるため、自分の雇用形態に合わせた料金を事前に確認することをおすすめします。
公務員看護師は弁護士の退職代行を選ぶ
国公立病院など、自治体が運営する医療機関で働く公務員看護師の場合、民間企業や労働組合が運営する退職代行サービスでは対応できないケースがあります。
そのため、公務員看護師が退職代行を利用する際は、弁護士法人が運営する退職代行サービスを選ぶことを強くおすすめします。
弁護士による退職代行であれば、国家公務員法や地方公務員法に則った適切な対応が可能であり、法的なトラブルを回避しながら確実に退職手続きを進めることができるでしょう。



公務員看護師の退職は、一般の病院の退職とは異なる点が多く、退職代行を依頼する際は慎重に業者を選ぶ必要があります。
ただし、国公立の病院は管理職のリテラシーが高い場合も多いため、まずは直接退職の申し出を行うといいでしょう。
そのうえで、在職強要をうけて辞めれない場合は、弁護士の退職代行の中から依頼先を選ぶようにしましょう。
看護師が退職代行で辞めるメリット
退職代行サービスを利用することで、看護師にはさまざまなメリットがあります。
特に医療現場特有の人間関係や責任の重さから、一般的な職業よりも退職の意思表示が難しい環境にある看護師にとって、退職代行サービスは大きな助けとなるでしょう。
ここでは、看護師が退職代行サービスを利用して辞める以下のメリットについて解説します。
看護師長や職場の人と顔を合わせずに辞められる
退職代行サービスで辞めるメリットのひとつは、看護師長や同僚など職場の人々と直接顔を合わせずに退職できることです。
エン転職の調査によれば、退職代行利用者の50%が「退職を言い出しにくかったから」、32%が「人間関係が悪かったから」を利用理由として挙げており、対人関係の負担軽減が大きな利用動機となっています。
退職代行を利用した理由 | 回答割合(複数回答可) |
---|---|
退職を言い出しにくかった | 50% |
すぐに退職したかった | 44% |
人間関係が悪かった | 32% |
パワハラやセクハラに遭っていた | 31% |
退職を認めてもらえなかったから | 27% |
入社して間もなく相談しづらかった | 24% |
体調不良(精神不調) | 22% |
引き止められた | 19% |
自分から伝えるのが面倒だった | 8% |
その他 | 3% |
特に看護師の職場では、チーム医療が重視される性質上、退職の意思表示後も一定期間は同じ職場で働き続けなければならないケースが多く、その間の気まずさやプレッシャーは大きな精神的負担となります。
退職代行サービスを利用すれば、そうした精神的ストレスから解放され、心身の健康を守りながら新たなスタートを切ることが可能になります。



第三者を介することで感情的な対立を避け、より冷静かつ円滑な退職手続きが可能になります。
ただし、「退職を伝えるのが気まずい」といった理由だけであれば、退職代行に頼らず、まずは自分自身で退職の意思を伝えることをおすすめします。
そのうえで、どうしても自力での退職が難しいと感じた場合には、外部の専門家への相談を検討するとよいでしょう。




有給休暇消化や未払い残業代請求の交渉も可能
労働組合や弁護士法人が運営する退職代行サービスを利用すれば、単に退職の意思を伝えるだけでなく、未消化の有給休暇を消化するための交渉や、未払いとなっている残業代の請求も代行してもらえます(※)。
看護師の職場では、人手不足を理由に有給休暇の取得が難しかったり、サービス残業が常態化していたりすることが少なくありません。
人材不足の中で退職することに申し訳なさを感じる看護師の場合、退職時に有給消化を申し出ることが難しい場合もあるでしょう。
退職後の転職先が未定の場合は、経済的なリスクを最小限にしつつ転職活動の時間を作るために、上記の交渉ができる代行サービスに依頼するのは大きなメリットといえるでしょう。



ただし、未払いの残業代や給与の請求を巡って訴訟等の対応が必要になった場合、労働組合の退職代行では対応できません。
そのため、法的リスクが高い退職条件の交渉をして欲しい場合は、弁護士の退職代行に依頼した方が無難といえるでしょう。


最短即日で退職できる
退職代行サービスの中には、即日対応をうたっているところも多く、病院の合意が得られれば依頼当日から職場に行かなくても良い状態にすることも可能です。
この2週間を有給消化に充てるか、もしくは欠勤とすることで、実質的な即日退職を実現することができます。
看護師は心身のストレスが限界に達していることも多く、「今すぐにでも職場から離れたい」と感じているケースが少なくありません。
そんな時に退職代行サービスを利用すれば、最短で即日から職場に出勤する必要がなくなり、心身の回復に専念できる点がメリットと得言えるでしょう。



ただし、退職代行に依頼しても必ず即日退職が出来るわけではありません。
特に、有期契約の看護師が雇用期間中に退職する場合、退職理由や状況次第ではスムーズに退職できない場合があるため、注意しておきましょう。




看護師が退職代行で辞めるデメリット
退職代行サービスには多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。看護師が退職代行サービスを利用して辞める際のデメリットは以下の通りです。
それぞれ詳しく解説していきます。
利用料金がかかる
退職代行サービスを利用する際に最も明確なデメリットは、費用がかかる点です。運営元によって料金相場は異なりますが、民間業者や労働組合のサービスであれば2~3万円、弁護士が対応する場合は5万円以上かかることもあります。
しかしながら、この費用は「退職に伴う精神的な負担の軽減」や「スムーズな退職手続き」のためのコストと捉えることもできます。自分自身の健康や、今後のキャリア形成を守るために必要な投資と考えれば、状況によっては十分に費用対効果が見合う選択肢となり得るでしょう。



もし退職代行にかかる費用を「もったいない」と感じるのであれば、まずは自力で退職を目指すのがよいでしょう。
ただし、未払い給与の支払いや有給休暇の消化などを自分だけでは交渉できないようなブラック病院に勤務している場合には注意が必要です。
こうしたケースでは、弁護士が対応する退職代行サービスを利用することで、経済的な負担を軽減できる可能性があります。
場合によっては、支払った費用以上のリターンを得られることもあるため、状況に応じて適切な選択を検討しましょう。


病院内の同僚の信頼を失う可能性がある
退職代行サービスを利用すると、病院内での評判に影響を与える可能性があります。
看護師は患者の命に関わる仕事であり、チームワークが重視される職場です。そのため、退職代行サービスを利用して突然辞めることは、周囲から「無責任」と受け取られる可能性も否定できません。
特に、長く勤めていた職場や良好な人間関係があった職場では、このような形で退職することへの罪悪感を感じる方もいるでしょう。
ただし、パワハラやモラハラなど耐え難い環境にいる場合は、自分の心身の健康を最優先に考えて行動する方がいいでしょう。



「チームプレイ」が重視される医療現場では、退職の仕方が後の人間関係に影響を及ぼすことは事実です。
退職後も同僚や上司と信頼関係を保ちたい場合は、自身の口から退職を伝えるように努めましょう。


転職活動に影響する場合がある
医療業界、特に看護師の世界は狭く、人の噂が伝わりやすい傾向があります。
退職代行サービスを利用して辞めた場合、その情報が業界内で広まり、転職活動に影響を及ぼす可能性も完全に否定することはできません。
特に同じ地域内での転職を考えている場合、病院同士の繋がりや看護師長間のネットワークを通じて情報が共有されることもあります。
また、転職先が前職について問い合わせることは、個人情報保護の観点から現在はほとんど行われていませんが、非公式なルートで情報が伝わる可能性は残っています。
このリスクを軽減するためには、転職先を現職から離れた地域や違う診療科に選ぶなどの対策が考えられます。また、退職理由を適切に整理しておき、次の職場での面接で質問された場合に冷静に対応できるよう準備しておくことも重要です。



一般的に退職代行利用の事実は表に出ることはありませんが、地域医療のネットワークが密なエリアでは慎重な対応が求められます。
不安がある場合は、転職エージェントなどを活用し、信頼できるサポート体制を整えることが望ましいでしょう。


看護師が退職代行を利用する際の注意点
退職代行を使うことで、しつこい在職強要を受けている場合でもスムーズに退職することが可能です。ですが、看護師が退職代行を使って辞める際はいくつか事前に知っておくべき以下の注意点があります。
それぞれ詳しく解説していきます。
必ず退職できるわけではない
多くの退職代行サービスは「退職成功率100%」とうたっていますが、必ずしもスムーズに退職できる保証があるわけではありません。
また、退職代行からの連絡によって病院側が感情的になり、損害賠償請求や懲戒解雇など、思わぬトラブルに発展する可能性も否定できません。
こうしたリスクを踏まえると、より確実かつ安全に退職を進めたい場合は、万が一のトラブルにも法的知識に基づいて対応できる「弁護士による退職代行」に依頼するのが望ましいでしょう。



基本的に法律に則った退職が可能ですが、病院の対応次第では複雑な交渉が必要になるケースもあります。
万が一の法的リスクに応じて、相談する退職代行サービスを選ぶようにしましょう。
病院から直接連絡がくることもある
退職代行サービスを利用しても、病院側から直接連絡が来る可能性があります。特に重要な引継ぎ事項がある場合や、退職手続きに関する書類の確認が必要な場合などは、直接連絡を取ってくるケースがあります。
このような場合の対応方法についても、事前に退職代行サービスと相談しておくことをおすすめします。
基本的には「すべての連絡は退職代行サービスを通してほしい」と伝えておくことで、直接のやり取りを避けることができます。



退職代行を利用した際に病院からメールやLINEで連絡が来た場合は、自分で直接返信せず、その内容を退職代行会社に伝えて対応を依頼しましょう。
連絡が来るとつい無視したり、ブロックしたりしたくなるかもしれませんが、余計なトラブルを避けるためにも、必ず内容を保存して記録を残し、その上で速やかに代行会社へ共有することが重要です。
退職条件の交渉は民間の代行サービスではできない
退職に際して有給休暇の消化や未払い残業代の請求など、何らかの条件交渉を希望する場合は注意が必要です。
そのため、条件交渉が必要な場合は、団体交渉権を行使できる労働組合か、正式な代理人として対応できる弁護士の退職代行に依頼する必要があります。
自分が希望する退職条件を明確にした上で、それに対応できるサービスを選ぶことが重要です。



民間の退職代行業者が退職条件の交渉を行うと、「非弁行為」と呼ばれる違法行為に該当してしまいます。
もし非弁行為を行っている退職代行業者に依頼してしまった場合、病院側にその違法性を指摘され、退職手続きがスムーズに進まなくなる可能性もあります。
そのため、利用する退職代行業者の対応範囲や運営主体については、事前によく確認しておきましょう。


奨学金を借りている場合は返済が必要になる
看護師の中には、病院から奨学金を借りて学校に通い、卒業後は一定期間その病院で勤務することを条件に奨学金の返済を免除されるケースがあります。
返済期間中に退職代行サービスを利用して退職する場合、病院側から一括返済を求められる可能性が高いので、事前に返済計画を立てておくことが重要です。
このような複雑なケースでは、弁護士が運営する退職代行サービスを利用することで、適切な法的アドバイスを受けながら退職手続きを進めることがおすすめです。



弁護士であれば、奨学金の返済方法についても交渉してくれる場合があるので、まずは相談してみるといいでしょう。
退職代行を使う前に転職先を確保しておく方が望ましい
退職代行サービスを利用する際は、事前に転職先を確保しておくことをおすすめします。特に経済的な不安がある場合は、収入の空白期間ができないよう計画的に行動することが重要です。
しかし、自分に合った職場環境や条件を見極めるためには、ある程度の時間と情報収集が必要です。
退職代行サービスを利用すると即日退職も可能ですが、次の職場が決まっていない状態での退職は経済的・精神的に不安を抱えることになります。
そのため、可能な限り、次の職場を決めてから退職代行サービスを利用することで、スムーズなキャリア移行が実現できるでしょう。



迅速に転職先を探したい場合は、看護師に特化した転職エージェントに登録して、希望条件に合った求人紹介を受けるようにしましょう。
退職代行で看護師が辞める具体的な流れ
看護師が退職代行を使って辞める際の主な流れは以下の通りです。
退職代行サービスを選ぶ
まず最初に、自分に合った退職代行サービスを選びます。
複数のサービスを比較検討し、無料相談を利用して担当者の対応や提案内容を確認した上で決めるとよいでしょう。
多くのサービスは電話、LINE、メールなど複数の相談方法に対応しているため、自分の都合の良い方法で問い合わせることができます。
希望の退職条件を伝える
退職代行サービスを選んだら、具体的な退職条件を伝えます。この段階で明確にしておくべき内容は以下のとおりです。
- 退職理由
- 希望する退職日
- 有給休暇の消化希望
- 未払い給与や残業代請求の有無
また、病院から奨学金を借りている場合や、寮・社宅に住んでいる場合なども、この段階で伝えておくべき重要な情報です。
退職代行サービスは、これらの情報を基に最適な退職方法を提案してくれます。
料金を支払う
サービス内容と料金に納得したら、支払い手続きを行います。
一部の退職代行サービスでは後払いに対応しているケースもありますが、ほとんどは先払いのため、注意しておきましょう。
料金の支払いが完了すると、正式に退職代行手続きが始まります。
必要書類を準備する
退職代行サービスから、必要書類や情報の提出を求められることがあります。一般的に必要とされる書類や情報は以下のとおりです。
- 身分証明書のコピー
- 勤務先の正確な情報(名称、住所、電話番号など)
- 直属の上司や人事担当者の連絡先
- 雇用契約書のコピー(あれば)
これらの書類や情報は、退職代行サービスが適切に対応するために必要なものです。看護師の場合、病院の規模や組織体制によって必要な情報が異なる場合もあるため、指示に従って正確に提供しましょう。



悪意ある第三者が本人に成りすまして退職代行を使うことを防ぐため、身分証のコピーなどを求めるサービスが多いようです。
退職代行サービスから病院へ連絡
必要な情報や書類の提出が完了すると、退職代行サービスから病院(多くの場合は看護部長や看護師長、または人事部)に連絡が入ります。連絡方法は主に電話やメールで、以下のような内容が伝えられます。
- 退職の意思表示
- 退職希望日の伝達
- 有給休暇消化の希望(該当する場合)
- 今後の連絡は退職代行サービスを通して行ってほしい旨
この段階で、病院側から質問や要望があれば、退職代行サービスが対応します。連絡の進捗状況は随時報告を受けることができるので、不安な場合はサービスに問い合わせるとよいでしょう。
退職完了
退職の意思表示後、合意が得られれば即日退職も可能です。退職完了までの手続きは以下のとおりです。
- 会社の制服や備品の返却
- 健康保険証の返却
- •離職票の受け取り
これらの書類のやり取りも、直接会わずに郵送で対応することができるため、病院へ直接行かずに退職手続きを進められます。退職代行サービスによっては、退職後の手続き(失業保険の申請方法など)についてもアドバイスしてくれるところもあります。
すべての手続きが完了すれば、正式に退職となります。多くの退職代行サービスでは、退職完了後も一定期間、質問や相談に応じてくれるアフターサポートがあるサービスを選ぶことで、不明点があれば遠慮なく相談するとよいでしょう。
看護師が退職代行で辞めても問題ない理由まとめ
看護師という責任の重い仕事であっても、退職代行サービスを利用すれば、法律に則って正当に退職することが可能です。
看護師が退職代行サービスを利用するメリットとしては、職場の人と顔を合わせずに辞められること、有給休暇の消化や未払い残業代の請求交渉が可能なこと、そして最短即日で退職できることが挙げられます。特に、精神的な限界を感じている場合や、ハラスメントが蔓延している職場環境では、こうしたメリットは非常に大きな意味を持つでしょう。
一方で、デメリットとしては、2万円〜10万円程度の利用料金がかかること、病院内での評判に影響を与える可能性があること、さらに場合によっては転職活動に影響するリスクがある点が挙げられます。
退職代行サービスの利用を検討する際は、自分自身の状況を冷静に見極めることが重要です。深刻なストレスや心身の不調を抱えている場合、また、何度退職を申し出ても認めてもらえないような場合には、退職代行の利用が有効です。
看護師というやりがいのある職業を長く続けるためにも、必要なタイミングで適切に退職代行サービスを活用するように心がけましょう。

